施設の食費・居住費を軽くする「負担限度額認定」
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院やショートステイの食費と居住費は、所得と預貯金が一定以下の方について、1日あたりに支払う上限(負担限度額)が決まっています。上限との差額は、介護保険から支給されます (特定入所者介護サービス費。「補足給付」とも呼ばれます)。
使うには、お住まいの市区町村に申請して「負担限度額認定」を受ける必要があります。
この記事の金額は、令和8年8月1日からのものです。金額や基準は見直されることがあります。
1. どういう制度か(補足給付)
施設の食費・居住費には、国が定めた標準的な費用の額(基準費用額)があります。所得に応じた負担限度額を決め、基準費用額と負担限度額の差額を介護保険から支給する仕組みです。
市区町村は、この支給分を施設に直接支払うことができます(介護保険法第51条の3第4項)。その場合、認定を受けた方が施設に支払うのは 負担限度額までになります。
認定を受けていない方(補足給付の対象ではない方)が負担する額は、 施設と利用者の契約で決まります。
2. 対象になるサービス
介護保険法第51条の3が挙げているのは、次のサービスです。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 地域密着型介護老人福祉施設(入所定員が29人以下の特別養護老人ホーム。 介護保険法第8条第22項)
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ)
要支援の方のショートステイにも、同じ仕組みがあります(第61条の3)。
有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームは、 ここに含まれていません。
3. 対象になる方 ― 所得と預貯金の基準(利用者負担段階)
原則として、世帯全員(世帯を分けている配偶者を含む。内縁の配偶者も含みます)が 市町村民税非課税であることが前提です。そのうえで、所得と預貯金等によって段階が分かれます。
| 段階 | 主な対象の方 | 預貯金等(夫婦の場合) |
|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護を受けている方 | 要件なし |
| 第1段階(老齢福祉年金) | 世帯全員が市町村民税非課税で、老齢福祉年金を受けている方 | 1,000万円(2,000万円)以下 |
| 第2段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、年金収入金額+合計所得金額が82.65万円以下 | 650万円(1,650万円)以下 |
| 第3段階① | 同じく、82.65万円超〜120万円以下 | 550万円(1,550万円)以下 |
| 第3段階② | 同じく、120万円超 | 500万円(1,500万円)以下 |
- 年金収入金額には、非課税年金も含みます
- 82.65万円は、令和8年8月からの基準です(それまでは80.9万円。令和7年の老齢基礎年金の満額が826,500円になったことを 踏まえた見直し)
- 夫婦の場合の基準は、ご本人の段階の金額に1,000万円を加えた額です
- 市町村民税が課税されている世帯(第4段階)は、この表の対象ではありません
ご自身がどの段階に当たるかは、市区町村が判定します。
4. 預貯金等に含まれるもの
含まれる
- 預貯金(普通・定期)
- 有価証券(株式・国債・地方債・社債など)
- 金・銀(積立購入を含む)など、口座残高で時価が容易に分かる貴金属
- 投資信託
- 現金(いわゆるタンス預金。自己申告)
含まれない
- 生命保険
- 自動車
- 腕時計・宝石など、時価の把握が難しい貴金属
- 絵画・骨董品・家財など
借入金や住宅ローンなどの負債は、預貯金等の合計額から差し引かれます。
5. 負担限度額(1日あたり)
| 基準費用額 | 第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | |
|---|---|---|---|---|---|
| 食費 | 1,545円 | 300円 | 390円 | 680円 | 1,420円 |
| 食費(ショートステイ) | 1,545円 | 300円 | 600円 | 1,030円 | 1,360円 |
| 居住費:多床室(特養など) | 915円 | 0円 | 430円 | 430円 | 530円 |
| 居住費:多床室(老健・介護医療院で室料を徴収する場合)※ | 697円 | 0円 | 430円 | 430円 | 530円 |
| 居住費:多床室(老健・介護医療院などで室料を徴収しない場合) | 437円 | 0円 | 430円 | 430円 | 430円 |
| 居住費:従来型個室(特養など) | 1,231円 | 380円 | 480円 | 880円 | 980円 |
| 居住費:従来型個室(老健・介護医療院など) | 1,728円 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,470円 |
| 居住費:ユニット型個室的多床室 | 1,728円 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,470円 |
| 居住費:ユニット型個室 | 2,066円 | 880円 | 880円 | 1,370円 | 1,470円 |
※「その他型」または「療養型」の介護老人保健施設、または「Ⅱ型」の介護医療院の 多床室(1人あたりの療養室の床面積が8㎡以上)に入所している方。
令和8年8月の見直しで変わったところ:第3段階①・②の食費が1日30〜60円(ショートステイを含む)、第3段階②の居住費が 一部を除き1日100円、食費の基準費用額が1日100円、引き上げられました。
どの行が当てはまるかは、入所する施設の種類と居室で決まります。施設に確認してください。
6. 申請のしかた ― 預貯金の確認への同意
お住まいの市区町村に申請します。全国共通で必要になるのは次のものです(様式や添付書類の細かい扱いは市区町村で 確認してください)。
- 申請書(介護保険負担限度額認定申請書):氏名・住所・個人番号・被保険者番号、 入所している施設の名前と入所日などを書きます。預貯金等の額も記入します
- 同意書:市区町村が銀行などに預貯金等を確認することへの同意
- 預貯金等の額が分かる書類:通帳の写し、証券会社や銀行の口座残高の写しなど (市区町村が公的な記録で確認できる場合は省略されることがあります)
- 被保険者証を提示します
認定されると「負担限度額認定証」が交付されます。施設に提示してください。
- 認定証の有効期限は、原則として毎年8月1日から翌年7月31日までです。続けて使うには、改めて手続きが必要です
- 施設を退所しても、有効期限内であれば、ほかの施設やショートステイで使えます。退所は認定証を返す理由ではありません(介護保険法施行規則第83条の6第5項)
- 条件に当てはまらなくなったときは、認定証を市区町村に返します
- 偽りや不正な方法で支給を受けた場合、市区町村は支給した額を徴収できるほか、 その額の2倍以下の金額を加えて徴収することができます(介護保険法第22条)
7. ほかの軽減の仕組み
この記事の制度のほかにも、次のような仕組みがあります。 当てはまるかどうかは、市区町村に確認してください。
- 高額介護サービス費:1か月に支払った介護サービスの自己負担が上限を超えたとき、超えた分が 支給されます
- 社会福祉法人などによる利用者負担軽減:実施していない法人もあります
- 市町村民税が課税されている世帯の特例減額措置
8. 老人ホーム・介護施設をさがすときに
種類ごとの費用のしくみは施設の種類と選び方と、種類ごとの費用の記事にまとめています。
9. この記事の出典
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1506(令和8年5月29日) 「令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について」
https://www.mhlw.go.jp/content/001706483.pdf - 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1481(令和8年3月13日・老介発0313第1号) 居住費・滞在費の負担限度額の一部改正 (令和8年厚生労働省告示第88号・令和8年8月1日施行)
https://www.mhlw.go.jp/content/001673838.pdf - 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1532(令和8年7月31日) 「介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて」の一部改正
https://www.mhlw.go.jp/content/001737209.pdf - 介護保険法 第22条・第51条の3・第61条の3
- 介護保険法施行規則 第83条の5(利用者負担段階の要件・預貯金等の額。 第1号ニが40〜64歳の基準)・第83条の6(申請書・同意書・認定証・返還)・ 第83条の8(やむを得ない場合の特例)
- いずれも2026年9月11日に確認しています。2026年9月15日に、§5の金額35個を Vol.1506の原本と突き合わせて再照合し、すべて一致することを確かめました。